相談者はアパレルの販売関係の仕事に長年していました。勤務先に勤務開始してから数年経過したところ、関連会社の縫製工場が納期の遅れが常態化しているので、てこ入れをして欲しいといわれ、工場長代理として、出向することになりました。
出向先の縫製工場の工員は低賃金のため新人の採用ができず、高齢になって無理が効かずまた新たな技術を習得しようというやる気もなく長年自分が担当してきた特定の狭い範囲の業務だけマイペースでやるだけの人ばかりという状態でした。相談者は、やる気のある新人を採用できるよう賃金のアップや、職人はなかなか育てられないので工場長や自分が技術が必要な仕事に集中できるよう事務作業は事務員を雇って担当させるなど改善案を提案したりもしたのですが、工場長は自分の仕事が無くなるのを危惧してか業務改善という発想が欠如しており協力が得られず、権限もないため何もできず、結局スーパーサブとして穴が開いた工程をひたすら担当するという状況が続きました。相談者は元の会社の販売関係の業務も引き続き担当していたため、月によっては残業時間が150時間前後という状況が続きました。
残業代が支払われないのに、異常な長時間労働が続いたこと、入社当初聞いていた条件から引き下げられ、いつまでも戻してもらっていなかったことから、相談者は退社することにしました。そうしたところ、いつの間にか変更していた就業規則により、退職の予告期間3か月経過せずに辞めたとしても退職金も大幅に下げられてしまいました。
そこで、労働基準監督署に相談に行き、交渉しましたが、相手方から無視されたため、私のところに相談にこられました。
私が代理人となって、交渉しましたが、相手方が具体的な回答をしなかったため、訴訟提起しました。相手方は管理監督者であると主張しましたが、
・管理監督者と言えるほどの権限がないこと
・労働時間の裁量があったとは言えないこと
・工場内では一番もらっているとはいえ、元々低賃金であり、相談者の賃金を労働時間で割ると最賃を下回る状況であったことなどを主張しました。
また、退職金についても、残業代の未払いがあるような本件は会社都合の退職であり、会社都合での対処を余儀なくされた事案に事前予告は不要であるし、そもそも3か月の事前予告を必要とする就業規則の変更は従業員代表の選出の手続きも行っておらず、周知もしていないのであるから無効であると主張しました。
会社側は、相談者が勝手に辞めたことで工場を閉鎖することを余儀なくされたなどと、残業代の請求や退職金の関係では無意味な事実を繰り返し主張し、争ってましたが、裁判所は相手にせず、結審間際になって、付加金の支払いを命じられるのを恐れてか、当方の言い値で和解となりました。