残業代の計算方法 | 飯田橋の残業代請求に強い弁護士|増田崇法律事務所

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残業代の計算方法

残業代の計算はかなり複雑ですので実際の計算は弁護士にお任せください。
皆様には概要を理解していただければ十分です。

残業代=月給(①)÷月の平均所定労働時間(②)×残業時間(③)×割増率(④)

 
例えば、月給25万円、土日祝日休みが60時間残業した場合は次の通りとなります

25万円÷163時間×60×125%≒11万5000円

 
以下では、もう少し詳しいお話をしていきます。
なお、残業代不払いの理由として会社がよく主張する、年俸性、裁量労働制、固定残業代、管理監督者、許可制、歩合給については、別のページで解説しています。
 

  • ①月給
  • ②月の平均所定労働時間
  • ③残業時間
  • ④割増率
  • ⑤時給の場合

 

①残業代の計算の基礎となる月給の範囲

まず、単価の計算の基礎となる月給は、固定で支払われているものは原則としてすべて含まれます。
残業代の計算を基本給だけで行っている会社が時々ありますが、労働基準法は支給名目で残業代の単価から除外するのは違法としています。
役職手当、無事故手当、精勤手当、営業手当など全て残業代の計算する際に基礎となる単価として含めなければなりません。
労働基準法が認めている例外は以下の7つだけです。
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金(社長賞など特別な理由で支給された賃金)、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与などです。)、これで全てです。
これらを法律上は除外賃金といいますが、この7つの除外賃金以外は全部残業代の単価に含まなければ違法です。
もっとも、名目が除外賃金であっても実質的に見て除外賃金といえなければ、残業代単価の計算から除外することはできません。
名目だけでよいとすると際限なく残業代の計算に含まれない賃金が増えかねないからです。
例えば、家族の有無にかかわらず一定金額を家族手当として支払う場合、通勤費や距離と無関係に一律に交通費を支払う場合、実際の家賃などの住居費と無関係に一律に支払う場合などは実質的に除外賃金に当たらないとして、除外賃金とは認められません。
また、年俸制で14や16で割って夏冬1か月分(もしくは2か月)を支給する場合もありますが、この場合も固定的な給与を分割しただけなので実質的には賞与とは言えないため、年俸を12で割った金額を基礎に計算します。
歩合給についての扱いについてはこちらをご覧ください。
 

②月間平均所定労働時間

労働基準法は1日8時間週40時間を上限と定めています。
ときどき、1日8時間週6日とか、1日10時間週5日というような会社がありますが、1日8時間週40時間を上限とする労働基準法に違反していますので、そのような契約は無効です(固定残業代については別途説明します。)。
もっとも、労働基準法は上限を定めているだけなので、これを下回る労働契約をすることは自由です。
一般的な事務職などでは土日祝日休みというところが多いと思いますが、これは祝日がある週は週40時間を下回る契約をしているということで、その場合には雇用契約や就業規則などでの労働時間が優先されます。
一方、シフト制などで週2日の休日は確保されているが祝日分の休みは考慮されない場合ですと、年間の労働時間は最大で
 

365÷7(日)×40(時間)≒2085時間
2085時間÷12≒173時間

 
となります。
土日祝日が休みの場合、その年によって休日の数は変動しますが、年間の労働日は245日前後となり、年間の労働時間は約1950時間(1日の所定労働時間が7時間30分であれば年間所定労働時間は1837時間、7時間15分であれば1715時間)、月の平均労働時間は約163時間(所定労働時間が7時間30分であれば153時間、7時間15分であれば143時間)となります。
さらに、祝日に加えて、夏季休暇やゴールデンウイークの谷間に休日が付与される場合にはその分年間の所定労働時間は減少します。
もっとも、正確な計算ではなくて、概算でよいのであれば、土日祝日休みであれば163時間、祝日は関係なく週休2日制であれば173時間で計算すれば十分です。
なお、1日の労働時間が7時間で、土曜日に隔週で出勤し、所定労働時間が35時間の週と42時間の週があるという会社も時々あります。
変形労働時間制が適法に実施されている会社であれば平均して40時間を超えないのであれば適法になりますが、変形労働時間制の手続きはかなり煩雑なため中小企業でちゃんと変形労働時間制の実施要件を順守している会社は私は見たことがなく、ほぼ違法無効と考えて差し支えありません。
違法無効となった場合は隔週で40時間を超える部分は40時間に修正して、隔週で40時間を切る週(例えば1日7時間×5で35時間)はそのまま計算することになります。
 

③残業時間

残業時間とは、所定労働時間を超えて労働した時間をいいます。
労働基準法通りの契約であれば1日8時間、週40時間を超えた部分が残業時間となります。
なお、労働基準法の1日8時間週40時間を超える所定労働時間を定める会社もたまにありますが、②で解説したように、露道基準法を上回る時間数を所定労働時間とする定めは違法無効となり、1日8時間週40時間に修正され、それを超えた労働時間は残業時間にカウントされます。
なお、1日7時間など労働基準法より短い時間を所定労働時間とする雇用契約の場合はそれは有効です。
例えば1日7時間就労の場合は、1日7時間を超えて8時間までの1時間も残業時間として扱われます。
この所定労働時間は超えているが1日の労働時間が8時間週40時間以内に収まっている残業時をは、労働基準法の規制時間内の残業という意味で、法内残業といいます。
法内残業は、残業の割り増しをする義務がないとされていますし、残業を命じる場合必須となる36協定も不要とされているなど若干扱いがことなります。
もっとも、実際には25%割増を支払う内容の法内残業か否かの区別をせずに25%割増した残業代を支払う雇用契約や賃金規定となっていることが多いです。
 

④割増率

原則
25%
1月60時間超
50%(法内残業は60時間にカウントされません。中小企業の適用猶予は2023年3月末で終了します。)
深夜労働
25%22時から翌朝5時まで
休日労働
35%
時間外労働+深夜労働
50%
休日労働+深夜労働
50%

 
月給を平均月間所定労働時間で割って時給の単価を計算しますが、この単価通り払えば足りるわけではなく25%割り増さなければならず、本来の時給と併せて125%分の時給を支払う必要があるということです。
深夜労働は本来の時給の25%割増を支払う必要があります。
通常の昼間勤務の場合通常の割増率である25%に深夜労働の25%の割増を合わせて150%の時給を支払うことになります。
なお、夜勤の仕事の場合など1日8時間以内で深夜労働となる場合もありますが、その場合は8時間以内なので25%割増は不要ですが、深夜の割増は支払わねばなりません。
すでに月給として時給は通常支払われているので、25%の割増分を追加で支払うことになります(例えば、月160時間で月給16万円(時給1000円、一部地域では最低賃金に違反しますが、説明の簡易化のため、その点は無視しています。
以下同様)で20時から翌朝5時までの仕事の場合、月給とは22時以降の労働時間に対して月給とは別に1時間当たり250円を追加で支払うことになります。)。
休日労働とは所定労働日以外に労働した場合(一般的な雇用契約のケースで言えば土日祝日に労働した場合)の全てを指すのではありません。
労働基準法は週休2日制を定めているわけではなく、週1日休まさなければならないとしています(ただし、1日8時間週40時間の範囲内である必要があります。)。
この週1日の休みがない場合は割増をしなければならないとしているのです。
なお、週休2日制の場合、法定休日の2日の休みのうちどちらなのかは雇用契約によりますが、特に定めていないことが一般的です。
その場合その週の最後の日が休日労働と扱われます。
カレンダーは日曜日から始まりますので、一般的な感覚とは異なりますが土曜日が休日労働となります。
休日労働は35%割増となり、深夜時間帯であれば25%割増と合算して60%割増になります。
もっとも、通常の残業の割増の25%とは合算されませんし、60時間超の50%割増とも合算されません。
 

⑤時給制の場合の残業代

例えば、24時間営業の飲食店で9時から18時までが時給1000円、それ以外の時間帯が1250円の時給制パートが14時から24時(途中21時から22時まで1時間休憩)まで勤務した場合どうなるかで解説していきます(最賃の話は前記のとおり、無視します。)。
中小の飲食店の場合、9時から18時以外は割増しているじゃないかと主張して、割増を支払わない会社があります。
しかし、このような時間帯で時給を分けているアルバイトの場合、朝から勤務しているわけではなく1日8時間の範囲内で勤務している場合であっても18時以降に勤務すれば時給1250円となるケースがほとんどでしょう。
そうすると、割増をしているのは残業代の割増率に対応するためではなく、昼間の時間帯以外は昼間の時給と同じでは人を集めにくいためと言えます。
従って、この差額は残業代の割増を行う趣旨ではなく、基本となる時給を上げたと言え、割増分の支払いにはならないと解釈されます。
したがって、14時から18時までが時給1000円、18時から21時までが時給1250円、22時から23時が1250円に深夜割増がついて時給1562円、23時から24時が1250円に深夜割増と残業の割増がついて計50%の割増率となり時給1875円となります。
なお、先ほどの14時から24時途中休憩1時間までの勤務を6日続けた場合は、6日目は40時間を超えていますので、勤務開始直後から25%割増がつきます。
そのため、14時から18時までが1000円に25%の割増がついて時給1250円、18時から21時までが1250円に25パーセントの割増がついて時給1562円、22時から24時までが深夜の25%割増と残業の25%割増で計50%の割増となり時給1875円となります。
同じ飲食店で、土日は時間帯関係なしに1400円としていた場合はどうなるでしょうか?週40時間を超えて働いているケース、もしくは週1日も休みを与えられていないケースに限って時給1400円とするなら、残業は休日の割増を支払うとみる余地もありますが、勤務時間に関係なく時給1400円支払っているのであれば、単に土日は同じ時給では人が集まらないから時給を上げているだけで、残業の割増分が含まれるとは言えません。
そうすると、14時から21時までは時給1400円、22時から23時までは深夜の25%割増で1750円、23時から24時が残業の25%割増と深夜の25%割増で計50%の割増となり時給2100円となります。

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