事業場外みなし労働時間制・変形労働時間制
事業場外みなし労度時間制
外回りの仕事が多い営業やドライバーなどで事業場外みなし労働時間制が採用することがあります。
これは、事業場外での労働について「労働時間の把握が困難な場合」にあらかじめ定めた労働時間を働いたとみなして、実際の労働時間にかかわらずあらかじめ定められたみなし労働時間分の給料を支払うという制度です。
しかし、通信手段が発達した現在、どこにいてもリアルタイムで管理することは可能なのであり、労働の管理が程度の差はあれ不可能というのはあまりありません。
そのため、「労働時間の把握が困難な場合」当たらないとして、事業場外みなし労働時間制の適用が肯定された事案はほとんどありません。
わたしが過去に担当した事件ではトラックのドライバーについて始業と終業の際には営業所に戻るため労働時間の把握が困難とは言えないとして事業場外みなし労働時間制の適用を否定された事案があります。
著名な判例では直行直帰が原則の旅行の添乗員のみなし労働時間制の適用を否定した事例もあります(阪急トラベルサポート事件)。
事業場外みなし労働時間制が適用が認められた事案は私は聞いたことがありませんし、念のため、判例検索システムで調べましたが、見つかりませんでした。
ほぼ確実に無効となると考えて差し支えありません。
変形労働時間制
変形労働時間制は1日8時間週40時間の所定労働時間を月単位や年単位で変形させることを許容する制度です。
繁忙期と閑散期がはっきりしている業界の会社などで、繁忙期の(例えば3月と12月)の所定労働時間を1日10時間にしたり週6日勤務にして、その分閑散期の(例えば7月、8月)所定労働時間を1日6時間にしたり週4日勤務にして削るという制度です。
変形労働時間制のポイントは所定労働時間をどこに持ってくるかについて柔軟に変更することを許容するものであり、平均すれば1日8時間週40時間というところを変更することを許容するものではありません。
変形労働時間制を採用しても年間の総所定労働時間を増やすことはできません。
従って、一年中常に残業しているというような会社では変形労働時間制を採用してもほとんど意味はありません。
もちろん、残業代の請求はできます。